Challenge

ビジョンを描く、挑戦の物語
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レアジョブの歴史
2026/04/10

「楽しく学ぶ」に挑み続けてきたTISG 40年の軌跡

1985年の英会話学校から始まり、学校法人の設立と運営、未就学児から小学生を対象としたキンダーガーテン・アフタースクール事業を展開してきた、株式会社東京インターナショナルスクールグループ(以下、TISG)。非認知能力を高める探究型カリキュラムを英語で学ぶことができる。道なき道を突き進んできた40年にわたる挑戦と、その根底に息づく信念とは? そして、EdTechカンパニーのレアジョブグループに参画を決断の真意、その先に描く未来への想いに迫る。

100年の呪縛にとらわれた日本の教育システム

長きにわたり、「日本の教育は明治時代から本質的に変わっていない」「100年遅れだ」と、揶揄されていた。
特に学校では、教師が大勢の生徒に説明するスタイルが基本で、知識の暗記を是とする風潮が長く続いていた。もちろん、時代に合わせた進化を遂げてはいたものの、この課題に対して正面から切り込んだのが、2010年代の大規模な教育改革だった。具体的には「学習指導要領の抜本的改訂」「大学入試改革」「GIGAスクール構想」である。

たとえば、新しい学習指導要領では、対話を通して主体的に学ぶアクティブラーニングが重視された。育成すべき資質・能力の一つに、知識・技能や思考力・判断力などと同列で「学びに向かう力・人間性等」が明文化されている。大学入学共通テストでは、単なる暗記ではなく思考力が問われる形式に変更された。そして、こうした学びを実現するための基盤整備として、小中学生に1人1台のタブレットやパソコンを配備するGIGAスクール構想が進められた。

出典:平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)「育成すべき資質・能力の三つの柱」(文部科学省)
これらの教育改革の推進と並行していたのが、国際バカロレア(IB*)の導入促進である。特に高校相当となるディプロマ・プログラム(DP)は「日本語で授業や最終試験を受けられるようにする日本語DPの導入を5年で200校に増やす」という方針が、2013年に閣議決定された。100年の呪縛の脱却に向けて、一つの風穴が開いた瞬間だった。

IBの本質は「概念教育」「探究型教育」にあり、テーマに対して自ら調べる、考える、結論をまとめて発信する、そして行動することを求める。この“探究”には、認知能力と非認知能力の両方が欠かせない。従来の学校教育においても、知識の暗記や技能習得といった「認知能力」を伸ばす仕組みは十分に整っていた。
対して、好奇心を持って主体的に思考する、正解のない答えに挑む、人や社会とのかかわりの中で協働するといった「非認知能力」を育む仕組みは、それまであまり組み込まれていなかった。これらを強化し、そのスキルを評価するという目的もあって、学習指導要領の改訂や大学入試改革が進められたのだった。

楽しさの中に散りばめられた学びの仕掛け

では、結局のところ「非認知能力」とは何なのか?

極端に言えば、日常生活で人とかかわる際に必要となる能力全般、だ。他者とのコミュニケーション、正解のない問いを考える力、リーダーシップや好奇心や倫理観なども、広義の非認知能力に含められる。主体性を起点としていることもあって、非認知能力の習得には、単なる知識の暗記で身につけられない難しさがある。子どもを対象にするなら、なおさらだろう。「だからこそ、楽しくないと意味がない」と、TISG代表取締役社長の坪谷 良は断言する。

「楽しければ、やりたくなる。やりたいことがあれば、行きたくなる。TISGのキンダーガーテンもアフタースクールも子どもたちが通ってきたくなるように、歌ったり踊ったり工作をしたり、とにかく楽しく過ごすことを第一に運営しています。楽しさの中に学びが散りばめてあれば、子どもたちは自ら好きなことを選び取って、できることを増やしていく。これが、主体性を育みながら子どもたちの個性や能力を引き出すTISGの教育です」

TISGでは非認知能力を、8つの視点で育むグローバル・スキルと定義している。

子どもたちは、探究という手段を通してこれらのスキルを身につける。たとえば「仕事」「世界の国々を学ぶ」といったテーマに付随して設定された問いに対し、さまざまなアプローチで挑んでいく。

算数の計算のような解ではなく、テーマに対して自分なりの答えを見つけにいくのだから、これは非常に時間を要する学び方だ。カリキュラムの設計はもちろん、教え方においても高度な教育的知見が求められる。

実は、TISGの創業者は国際バカロレア機構国際バカロレア日本大使も現在務めている実績があり、日本におけるIBの導入普及の第一人者でもある。彼女が理事長を務める東京インターナショナルスクールもIB認定校であり、探究型カリキュラムを活用している。

非認知能力×英語という新たな教育

TISGの創業は1985年、最初はイングリッシュ・スタジオ三田校という英会話スクールにまでさかのぼる。運営は順調だったものの、やがて「英語“を”教える」のではなく「英語“で”教える人間教育をしたい」との想いから、探究型学習プログラムのLTE(Learning Through English)を開発した。そして、子どもが生まれたのを機に、彼らが通うための幼稚園を開園。その後、小学校と中学校も設立し、それが現在の学校法人東京インターナショナルスクールである。


2010年代は保育園の待機児童問題、近年でも学童保育落選など、依然として子どもを取り巻く教育の社会課題は少なくない。TISGでは2013年頃から未就学児向けのキンダーガーテンと小学生向けのアフタースクールの多店舗展開に注力し始めた。それは、当時ほとんど前例のなかったビジネス。幼保施設や学童保育という子どもを預かる場所と、英語学習を掛け合わせて複数展開していくという着想が斬新だった。しかもそのカリキュラムは探究型で非認知能力を育むのだから、その思想そのものの認知も獲得していく必要がある。立ち上げ当時は挑戦しかなかった、と坪谷は振り返る。

「何もかもゼロから構築していくわけですから、手探りでトライアル&エラーを繰り返すより他ありません。TISGの教育思想を伝えるのはもちろん、校舎を開くための物件探しから内装の施工管理から、もちろんスタッフの採用や生徒の集客もありました。(あれ…俺の仕事って教育事業だよな?)と思った瞬間なんて数えきれないです。都内から始めて地方都市部にも校舎を展開するなど、手探りのまま突き進んできました」

すべては、楽しい学びを子どもたちに届けるため。そして、身につけた学びを力としてグローバルで活躍できる人材を輩出していくため。TISGのビジネス展開そのものが、まさしく答えのない問いに挑むアプローチの体現だったのかもしれない。

そんな中、堅調に伸びてきた事業を大いに揺るがす事態に見舞われる。2020年から数年にわたって続くこととなるコロナ禍だ。

コロナ禍で直面したオフライン教育の限界

「もう本当に会社がつぶれると思った」と坪谷は振り返る。
2020年4月、晴れやかに始まるはずだった新年度は、政府による緊急事態宣言の発令ですべてが覆った。学校は臨時休校、商業施設も臨時休業、当然ながらTISGの施設も開くことはできない。子どもたちの笑い声が響いているはずの校舎は静まり返り、世界中が不安と恐怖の闇に突き落とされた。

「もちろん、オンラインでできる限りのサービス提供はやってみましたよ。でも、無理でした。幼児教育は、人と人と同じ空間で過ごし、五感を使ってふれあいながら行っていくものです。画面越しに顔が見えても、話すことができても、そこには体温がない。一緒に歌えても、友達や先生と手をつなぐこともできない。オンラインをベースに設計したサービスや教育もありますが、TISGのサービスとして提供するのは困難で、売上への打撃は致命的でした」

感染症拡大の状況好転に合わせて事業も少しずつ持ち直していったが、コロナ禍は、オフラインをベースとした教育で実現できる限界を突きつける出来事となった。人間性を育む幼児教育において、オンラインに代替できない価値を再認識すると同時に、リアルな場で1人の先生が複数の子どもを相手にするモデルの限界が浮き彫りになったのだ。
ただ、目指す教育の追求という点では、限界と同時に新しい可能性を知る契機になった、とも言える。個別最適な教育の実現や、場所やコストの制約をクリアしてより多くの子ども達に価値を届ける手立ての模索という、新しい課題が見えてきたのだった。

オフライン×オンラインが叶える「最適解」

教育改革の3つ目にある「GIGAスクール構想」によって、子どもたちはデジタルで学ぶツールを手に入れた。それは同時に、個別最適化(アダプティブラーニング)の選択肢が広がったことも意味する。一律の教科書で一律の内容を学ぶだけでなく、一人ひとりの理解度や興味に合わせた学びを、より実現しやすくなったのだ。
コロナ禍の痛手や社会情勢の変化を鑑みながら、TISGにおいても、事業の対極にあるオンラインの可能性に着目することとなった。

「近年、社会のあらゆる場面でオンラインサービス、AIを使ったサービスが増えています。TISGが基本とするオフラインの教育サービスは、人との協働をはじめとする非認知能力を高める方法として最適な一方で、本質的にグループワークの性質が色濃いので、個別最適という観点ではあまり適していません。個々のレベルに合わせた学習や弱点を克服するには、やはり個別最適な学習の方がベター。とはいえ、それをオフラインで行おうとすると、コストが爆増して提供範囲が狭まってしまいます。より多くの子どもたちにより良い教育を提供するには、オンラインやAIを用いたサービスとのシナジーが不可欠だと考えました」

テクノロジーを軸にオンライン英会話サービスを展開してきたレアジョブグループにジョインしたのも、オフライン×オンラインによる幼児教育の実現というシナジーが、双方にとって目指す未来に近づく手立てだと考えたからだった。非連続な成長へと飛躍するための挑戦も、徐々に始まっている。


「TISGとしては、キンダーガーテンとアフタースクールそれぞれの特色を際立たせたサービス展開を目指していきたいです。キンダーガーテンは外国籍の子どもたちの在籍数を増やしてより国際色豊かなカラーを強め、アフタースクールの方では英語学習の要素を強化していくなど、戦略的な展開を考えています」

それでも「子どもたちの個性や能力を引き出し、楽しく学べる」という信念が変わることはない。

未来の世代を育む、誇りある事業

活用できるスキルや知識があれば、国籍や年齢、性別や地理的要因などのハードルを飛び越えて、誰でも、どこにいても、チャンスをつかめる。そんな社会を創造したいという想いが、レアジョブのグループビジョンである“Chances for everyone, everywhere.”には込められている。かつて、オンライン英会話の提供によって歩み始めたその道を、これからはTISGもともに進んでいく。今ここに居る子どもたちにはもちろん、より多くの子どもたちに、より多くの多彩なチャンスを届けるために。

TISGの校舎では、そこかしこから英語と元気な笑い声が聞こえてくる。何も特別なことはない平日の夕方のワンシーンだが、「キンダーガーテンからアフタースクールまで、10年近く在籍してくれる子もいるんですよ。そういう子たちから『もうすぐ卒業なんだよ』と声をかけられた時が、一番うれしい。ちょっとさびしいけど、やっぱりうれしい」と、坪谷は言う。


一人ひとりの子どもたちを見つめながら、次世代を担う原石を育てるのがTISGの事業。チャレンジングな課題が出てきたとしても、大切に日々を積み重ねていく。

壁に貼り出されたカラフルなポスターや自己紹介カード、色も線も自由に子どもたちが描いたドローイング。何気ない光景をかたちづくる瞬間のすべてに、たくさんのチャンスと豊かな未来につながる事業を営むTISGの誇りがきらめいていた。