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ビジョンを描く、挑戦の物語
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2021/03/16

【教育の“質”を問う vol.2・後編】CEFRをベースに、成果の高いメソッドを次々と開発

真摯に教育の質と向き合おうとするなら、適切な順番を大切に進んでいかなければならない、と下又は考えている。

組織の整備とマインドセットの次に行うべきは、必要な知識の習得。
語学教育ビジネスの“三種の神器”を揃えることだった。

SLA(Second Language Acquisition:第二言語習得理論)
TESOL(Teaching English to Speakers of Other Language:英語教授法)
CEFR(Common European Framework of Reference for Languages : Learning, teaching, assessment:ヨーロッパ言語共通参照枠)

SLAは、母語以外の言語を効果的に習得するため、多様な学習法を一般化した理論。
一方、TESOLは英語学習者への指導法だ。
たとえば、日本語を話せる日本人が、必ずしも外国人に日本語を教えるのもうまいとは限らない。
「教える」ためには別物の知識が必要であり、TESOLはそれに当たる。

知識習得のステップに進んでからも、下又はやはり自らが先頭に立ってその背中を見せ続けた。
日本でもフィリピンでもSLAを教え込むとともに、フィリピンのTESOL認定機関の講座を自ら受講して資格を取得。レッスンにかかわる講師トレーニング部門のスタッフにもTESOLを取得させ、英語指導のプロ講師として活躍できる体制を整えた。

真の意味で“質”の高い教育を実現するには「誰が(講師)何を(教材)どう教えるか(指導メソッド)」を一体化させなくてはならない。
すべてが関連し合って初めて、高い成果を出せる指導を実現できるからだ。
この3つには日本のQCDと、レアジョブフィリピンの教材開発部門と講師トレーニング部門がそのまま当てはまる。

日本とフィリピンを行き来し、知識や理解度の足並みを揃えて同じマインドを共有できるように下又が力を尽くしてきた理由も、それが理想とする教育の実現に不可欠だったからに他ならない。
「根」を盤石に整え、下又は「幹」を強くするという次なるステップへと進むことにした。

レアジョブは英語関連事業において「日本人1,000万人を英語が話せるようにする。」というサービスミッションを掲げている。
当然ながら「英語が話せる」ことを具体的に示し、そのために必要な方法を考え、提供しなくてはならない。
そのために下又が着目し、取り入れたものこそ、世界的に普及しているグローバルな指標。
日本でも英会話業界が先んじて取り入れていたCEFRである。
これが、レアジョブでの教材開発・指導・評価を体系的に構築する「幹」に据えられた。

何事も一足飛びには進まない。
地道に「根」を張ってきたのと同様、CEFRの導入も少しずつ、しかし着実に下又は進めていった。

たとえば、日本とフィリピンのQCDが共同で、約1年に渡り毎月勉強会を実施。
スタッフは300ページにおよぶCEFRの定義書を読み込み、発表の場を設けて知見を共有し合った。
他国や他社の語学業界ではCEFRをどのように活用しているのか、導入事例の研究も進めた。

日本におけるCEFR普及の第一人者・投野 由紀夫教授と
「幹」を強くしながら、サービス面での変革も行った。
まずは、CEFRを日本人学習者に適応させた「CEFR-J」に基づくレアジョブレベルを導入。
これにより、受講者は自分が「どの程度英語を話せるのか」を定量的に把握できるようになる。
こうしたレベル自体は多くの事業者が制定しているものの、独自設計しているケースが多く、したがって「A社ではレベル7と判定されたのに、B社ではレベル4だった」ということが起こりうる。
CEFRなら、世界標準で自分のレベルを知り、海外でもそのまま通用する。

また、2015年からはCEFRをベースとしたプログラムや教材の開発をスタートさせた。
従来の「日常英会話コース」に加え「中学・高校生コース」と「ビジネス英会話コース」を拡充。
これは、英会話業界に長く身を置いてきた下又が、予測を織り込んで打った先手だった。
オフラインの語学学校でのトレンドは、数年後に必ずオンライン業界にもやってくる。
受講の対象者を広げ、ビジネスに特化したコースを創設し、コンテンツバラエティの強化を先駆けて行ったのである。

初の学校向けレッスン実施後のスタッフ
一方で、より学習効果の高いプログラム開発も進めていった。
2016年に短期集中プログラムの「レアジョブ本気塾」をスタート。
2018年には、オンライン完結で成果保証を掲げた「スマートメソッド®コース」の提供を開始した。
効果の高い学習を行うことで、短期間でも成果を見込めるプログラムを生み出したのである。
そこにも、CEFRに基づいて受講者の弱点を把握し、補いながら英会話力を伸ばしていく設計がなされていた。

さらに、CEFRではAssessment(測定)の要素も重視されており、その領域をカバーするのが、2020年にリリースした英語スピーキングテスト「PROGOS」である。
CEFRに基づいて英語スピーキング力を明確に測定し、より望ましい学習継続をサポートするツールの開発も達成できた。

これらのサービスやプロダクトは、いずれも「枝」にあたる部分。
外から見ていると、ここにきてようやく「レアジョブが、CEFRというものを使って新しいことをしているな」と目に見え始める。

確かに、組織体制やスタッフのマインド、CEFRを活用するための研究やインプットなどは見えづらい。
それに、実はプログラム開発だけならそこまで難しくもない、と下又は言う。
しかし、かたちばかりのプログラムや教材を揃えるだけで、本当に“質”の高い教育だなどと言えるだろうか?
受講者は本当に成果を感じ、レアジョブのサービスに満足してくれるだろうか?

あまりにも愚直な、苦難の道に見えたとしても、教育と真剣に向き合い、高い“質”の実現に必要なものすべてを込めたプログラムや教材だからこそ、その先の成果、そして受講者満足につながっていくのだと下又は信じている。

振り返れば入社初日、下又は「初めて教育業界出身の人が来てくれました」と、スタッフの前で紹介された。
異文化からやってきた、異人種。
「IT事業者を教育事業者に変えていく」などという途方もない使命を、その難しさと大変さを、理解されるはずもない。

レアジョブに来たからには、レアジョブで、オンライン英会話で、高い学習成果を出せるサービスの提供を実現しなくてはならない。
その一念が、すべてだった。
同時に、その想いが長く険しい道――教育の“質”を高めるという「木」をゼロから育てていくチャレンジの道を、屈せず歩き続けていく原動力にもなっていた。

今、ようやくその軌跡が結実し始めている。
教育の“質”を象徴する木はのびのびと枝を伸ばし、豊かな葉や実をつけてきた。
レアジョブはEdTech Companyとして“質”の高い教育を実現し、学習の成果にフォーカスしたメソッドを、そしてサービスを次々と世に送り出している。

もちろん、進化に終わりはない。
下又の目は既に、数年先を見据えていた。
まだ誰も見たことのない、未知なるチャレンジへの歩みが始まっている。

※役職、部署名などは2021年3月時点

下又 健
執行役員 Chief Quality Officer プログラム開発本部長
新卒でリクルートに入社。海外で起業したいとの想いから、その後単身でマレーシアへ渡り教育事業を立ち上げ、14年間会社を経営。帰国後は、マレーシアでの起業・経営経験を活かし、バンダイやベルリッツにて英語教材の開発やグローバル人材育成事業に従事。2014年、レアジョブに入社。CQOとして教材開発や講師の指導品質向上などを管掌。2015年、執行役員に就任。